大学野球シーズンの開幕
『人気の六大学、実力の東都』
と呼ばれることは多くある。
2023年のドラフトでは、東都からの大学生指名が注目され、
多くの選手がドラフト上位でNPBの門を叩いた。
9月、ドラフト前の最後のアピールの場である大学野球の秋のシーズンが一斉に始まった。
スカウトからしてもドラフト指名への最終確認の場でもあろう。
シーズン前から今年も多くの大学生が注目を集め、多くの野球好きが色めき立っている。
「実力の東都」は健在で、青学の西川、佐々木など今年は野手にも注目が集まっており、
「人気の六大学」でも明治の宗山を筆頭にドラフト1巡目候補に挙がっている。
プロ入りしても東都リーグの選手たちは活躍を見せている。
中央大からDeNAへ入団した牧秀吾などは今や日本を代表するスラッガーへと成長。
阿部慎之助もこの中央大学出身である。青学出身の吉田正尚は立派なメジャーリーガー。
数を挙げればキリがないが、東都の選手たちはプロ野球の世界でも躍動をしている。
そんな中、実力の東都、人気の六大学でもない、
大学野球リーグにも注目をしたいところである。
”ロマンの首都大学”
注目を集める六大学や東都に比べて注目度は下がるが、
首都大学野球リーグも実力には劣らないリーグである。
原辰徳や菅野智之(巨人)、田中広輔(広島)を輩出した東海大学や、
青柳晃洋(阪神)、塩見泰隆(ヤクルト)を輩出している帝京大学など、
名門チームが所属している。
また、日本体育大学で二刀流の矢澤宏太が日本ハムに入団したことも記憶に新しい。
首都大学野球リーグの選手たちは、ドラフト下位で入団してプロでも活躍するというのが
ここ多いリーグである。もちろん上述の通り菅野や矢澤など例外もあるが、首都大学野球リーグには、二刀流や剛速球、安打製造機、多種多様な選手たちに溢れ、”ロマン”がある。
このロマンあふれる素材が集まっている首都大学野球リーグこそ、
スカウトの目が試される場所になる。
2024年、この首都大学野球リーグの非常に気になる存在が、明治学院大学にいる。
明治学院大学という大学は、プロ野球選手の排出としてはかなり少ない大学ではあるが、
2023年、ソフトバンクに澤柳亮太郎投手が入団。すでに戦力外となってしまっているがヤクルトの松本友もこの明治学院大学出身である。
そして、数例しかないほとんどの明治学院大学の出身のプロ野球選手たちは、大学から直接プロに入ることも少なく、社会人や独立リーグを経ての入団となる。
明治学院大学は首都大学野球リーグの2部に所属するチームで、長きに亘り2部に所属をしていた。この万年2部だったチームが、2022年の秋、2023年春、2023年秋と首都大学リーグの1部に昇格をしたのだ。ここでは大きくは取り上げないが、現在かずさマジックに所属する投手で当時の明学のエースだった佐藤幹の存在は大きい。プロ志望届も提出したものの指名はなく、新日鉄かずさマジックへの入団となった。社会人の道に進みプロを目指している。
目標にしていた1部昇格をしたチームだが、2023年秋を戦って1部の最下位となり、入替戦に敗れ、現在2024年は2部での戦いを続けている。
このチームにおいて注目の選手なのは、篠田隼(4年)である。
篠田は成田高校から明治学院大学に進学し、センターのポジションを主に守っている右打者。2年生の時から9番でのスタメンなども多く、首都大学の1部も経験しているメンバーである。2023年には大きく打撃面も成長を見せ、徐々に打順も上がり、2番や7番での便利屋としての出場も増えた。2023年春には1部でのベストナイン獲得。秋にも3年生ながら打率リーグ6位のバッティングを見せた。2部で迎えた2024年春、脅威の5割超の打率を見せ、堂々の首位打者・ベストナインを獲得した。
これまでは俊足でコンパクトなバッティングをする篠田だが年々パワーがついてきて打球へのインパクトも強くなってきている。4番を務める小澤輝(4年)へのチャンスメイクを行い、チャンスに強い小澤へ何度も繋いだ姿が見られた。小澤も多くの打点が評価され、ベストナインを2度獲得しているが、出塁率も高い3番にいる篠田がこの打線が機能させる役割を果たしている。
”プロ注目”と言われない彼らの選択
首都大学リーグ、そして2部に所属する”5割バッター”だが
決してこれまで『プロ注目』と騒がれたことはない。
1部に所属していた2年生からスタメン出場を続け、首都大学野球リーグの1部・2部で堂々とした成績を残し続けた。
しかし、プロ志望届の提出名簿にはまだ彼の名前はない。
もしかしたらすでに社会人への進路など決まっているかも知れない。
そもそも野球を続けることがないのかもしれない。
プロを目指した佐藤幹の存在を見てきた彼の進路は気になるところである。
”ロマンの首都大学”は、秋シーズンが始まっている。
ドラフト会議に向けてどんな活躍をする選手が現れるのか注目である。