2024年8月からハヤテに加入した大山盛一郎
2024年からNPBのファームリーグに加入した静岡市清水を本拠地とする「くふうハヤテベンチャーズ静岡」。多くの元12球団選手たちに加え、プロを目指しているアマチュア選手たちがNPBのファームリーグへの門を叩いた。12球団の7月31日までの支配下登録期間は終了してしまい、元12球団選手たちにとっては12球団復帰というのは叶わなかった。7月末以降は、NPB12球団未経験の選手たちが10月に行われるドラフト会議に指名されるのかという部分が多くの注目を集める。
そんな中、くふうハヤテベンチャーズ静岡に8月に新たに加入した選手がいる。沖縄県出身の大山盛一郎という選手である。8月9日から出場し始め、まだくふうハヤテのタオルやユニフォームなど公式グッズにも、公式選手名鑑にも名前のない選手である。大山盛一郎にはアピールすることができる期間はドラフト会議までの2か月間しかない。
このタイミングで加入して、「たった2か月で12球団に指名されるはずもない」と多くの人が思うことだろうが、実はそうでもないのである。その秘密はこのタイミングでの加入にある。
MLBドラフトに一番近い日本人
沖縄県出身で浦添ボーイズに入り、ジャイアンツカップにも出場した経験がある。その後、沖縄の宮城大弥(現・オリックス)を輩出した興南高校へ進学をしている。宮城は大山の一学年下であり、チームメイトでもあった。興南高校時代には、ケガで3年生時は出場機会は限られてしまったが2年生からレギュラーを獲得していた。高校卒業後は、日本の大学や社会人野球ではなく、海外へ進学をして野球留学。そしてさらに、名門カリフォルニア大学アーバイン校へ進学をし、アメリカ最高峰の大学リーグであるケープコッドで活躍をした日本人として名を馳せた。アメリカでは「Jo Ohyama」という登録名で活躍をし、「Jo Ohyama」のスタッツを見てもシーズン3割6分の成績。オールスターにも選出されており、プレーオフなどそのすべての打撃成績も含めても通算3割4分を超えている。その中でも、2塁打3塁打も多く放っている俊足巧打のイメージが湧く。各試合のゲームログを見ても.OPSもかなり高い。ホームランという長打こそは多くないが、アベレージ型のバッターで2塁まで狙える走塁もできることが分かる。
このようにケープコッドでの成績を残し、MLBドラフト候補として名前が挙げられることとなった。しかし、MLB入りへの期待されたが、指名はなかった。本人としては、MLBドラフトからNPBでのプレーに切り替えを行い、10月のドラフトへの指名を目指すべく8月の帰国への準備を整えた。
※ケープコッドリーグでのスタッツは下記のサイトを参照している。過去のゲームログも記載されている。。
https://pointstreak.com/baseball/player.html?playerid=1627936
MLB指名漏れ、そしてハヤテへ
MLBドラフトの指名を目指したものの、指名漏れ。日本のプロ野球でのプレーを目指し、6年ぶりに日本での野球をすることを決めた。そして、『世界のジョー』は日本の静岡県を新天地に選んだ。8月からと遅い参加ではあるが、ファンが作る応援歌には『ハヤテの救世主』という言葉が入っている。
6年ぶりの日本の野球に適応しようと、8月9日から試合出場を続け、一時4割を超える打率を残した。今でも3割を超えており、まさに低迷するチームの『救世主』となっており、2番打者として多くのチャンスメイクを行っている。
9月8日のドラゴンズ戦でも初回増田将馬の3塁への内野安打から梅津晃大(中日)からうまく救い上げライト前ヒットで先制の犠牲フライにつなげる演出もした。梅津はドラゴンズを今後になっていくであろう1軍でも経験の多いピッチャーである。梅津の球を救い上げるバッティングは見事なバットコントロールであった。ウエスタンリーグの規定打席には遠く及ばないが、3割を超える成績はリーグでもトップクラス(9月7日段階で.308で佐藤啓介=広島がトップ)となる。8月からの成績でほぼ初めての投手との対戦と考えるとこの適応力は一級品だろう。多くのプロ入り1年目の選手たちが初めての対戦に苦労する中、大山盛一郎のこのコンタクト力・適応力は即戦力となりうる。体格は大型ではなく、ホームランを多く打つというよりは、1,2番バッターとしての出塁を目指せるバッターになっていくだろう。くふうハヤテでは、アピール期間が限られることもあり、走ることも積極的になっている。ゆえに盗塁や走塁の失敗も多いが、足も速い。前述の通り、内野安打や2塁を陥れる走塁が出来るだろう。
ドラフトの隠れた目玉
今のドラフト市場では、明治大の宗山、大商大の渡部、青学の西川などが野手としては注目されている。多くの進学を前提とした高校・大学・社会人を中心としたドラフトの注目候補は出そろってきているが、これまでの経歴と違う”異質”の大山盛一郎がどこの球団に指名されるのか。そして指名順位についても注目したい。指名の可能性だが、ウエスタンリーグは対戦経験もあり、有力となるだろう。マッチする球団に関してもヒットメーカーのセンターラインは重宝される。大山は打てるセカンド・ショートとしてもどちらでも起用が可能で、ベンチャーズの試合でもセカンド・ショート両方での試合出場を続けている。センターラインの世代交代をするチームにはかなりいい指名となる。
MLBドラフト候補と言われた逸材は次はどの球団の『救世主』となるのだろうか。大山盛一郎の残りのアピールできるファーム最終戦までの期間はあと1か月を切っている。