「夢」から「現実」へ ”大家族”独立リーガーの挑戦

2024年ドラフト会議に『4度目の正直』にかける

徳島インディゴソックスは四国アイランドリーグの前期優勝・後期優勝。
シーズン通して完全な引き離した状態での完全優勝を決めた。

そのチームに、打率3割超、本塁打リーグ2位、打点リーグ2位。
2024年シーズンの徳島インディゴソックスにNPB入りに向けた情熱を燃やす男がいる。

9人兄弟の大家族、家族全員が野球やソフトボール経験者、
兄も同じ四国で独立リーガーとして活躍をした。
そんな”野球大家族”に生まれた男は、これまでの野球人生恵まれた環境にいたわけではない。
その男は2024年、ひたむきに試合に出場を続け、NPB入りに向けてアピールを続ける。

徳島インディゴソックス『柏木寿志』という男

野球のファンであれば、もしかしたらこの男の名前を聞いたこともあるかもしれない。
その男の名前が知られたのは3年前のドラフト会議当日に放送されたTBS系の特番「THE運命の日」である。
当時は、さわかみ関西独立リーグの神戸三田ブレイバーズ(現在は兵庫ブレイバーズに改称)に所属おり、誰よりも努力をして、恵まれない野球環境やプロを目指す熱意に多くの人が心を打たれた。独立リーガー2年目でパンチ力も自慢の足もアピールをし、さわかみ関西独立リーグの中でも一目を置かれる存在であり周囲の期待も大きかった。

しかし、この”努力の天才”の想いは届かなかった。

2023年、チームも兵庫ブレイバーズと名前が変わり、柏木はチームのキャプテンにも就任。兵庫ブレイバーズの背番号6は、セカンドやショートの守備でもアピールを続けた。
そして、2023年シーズンも汗の染みわたる土のグラウンドに誰よりも立ち続けたが、夢はかなわず2年連続の指名漏れしてしまった。

2年連続で多くの期待の声に応えることが出来なかった。
しかし、この男は応援してくれる人への「感謝」の気持ちも忘れず、前を向き続ける。
「ありがとうございます、期待に応えられるように頑張ります」
当時、独立リーグのチームはクラウドファンディングでのチーム運営や個人スポンサーなどの受付でチームを運営することも少なくない。少額で支援をしただけの私にまで感謝のメッセージまで寄せた。

環境を変えるべく独立リーグの名門徳島へ

2022年末、私は衝撃を受けた。
徳島インディゴソックスの公式ホームページにの入団テストの特別合格した選手の名前に「柏木寿志」の名前があったのだ。毎年、NPB入りを生み続けている独立リーグの雄、徳島インディゴソックスに入ったのである。さわかみ関西独立リーグで活躍し続けた男が、四国ILでどこまでやれるのか、その先にある”柏木の夢”は叶うのか。

そして始まった2023年シーズン。
開幕の地である徳島のグラウンドには兵庫時代と同じ背番号6の姿があった。
この年、柏木は時にはバントなどシーンに合わせたチームバッティングを心がけた。
最終的に2割後半の成績、リーグ2位の盗塁数を残し、ベストナインにも選ばれた。さわかみ独立リーグから移籍してきた選手が層の厚い四国アイランドリーグの9人に選ばれたのである。この年、徳島では育成も含め6人もの選手がNPBに指名をされたが、
柏木の名前は呼ばれることはなかった。
しかし、柏木はまだ上を目指せる。そう感じさせるシーズンであった。
底知れない向上心が取り柄の柏木にとって、まだ私たちをワクワクさせてくれる。

柏木という男は、今度こそ期待を裏切らない。
2024年が柏木の飛躍のシーズンとなる。ベストナインに選ばれた二塁手だけでなく、元来のポジションの遊撃手や、新しく三塁手のポジションでもレギュラーとして出場。
打率も3割を超え、打点・ホームラン共にリーグ2位の成績を残している。
そして守る方も、長い土のグラウンドでの経験もあってか安定した守備を魅せ、
まさに”走攻守”揃った選手に仕上がった。

夢をあきらめない苦労人の挑戦

これまで3度の指名漏れを経験。
その度に折れずに努力をし続けてきた男の夢は確実に「現実」に近づいてきている。
どんな環境に身を置いても毎年のように成長をして、楽しませてくれる柏木は、
なぜだか観ているこちらが「今年こそ」と周りをワクワクさせてくれるパワーがある。
柏木の夢はいつの間にか、わたしたちの夢になっているのかもしれない。

あのドラフト特番から4回目のドラフトを迎えようとしている。

梅井 健太郎

1990年生、広島県出身。高校野球や独立リーグ、プロ野球を中心に現場で足を運び、若手のプロスペクト選手を中心に取材。野球のレプリカユニフォームの収集家でもあり、自宅には300着以上のユニフォームを所有。野球チームの演出・イベントにも精通しており、過去には球団の開幕戦演出にも企画として携わった経験もある。

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